診療予約システムを利用するとキャンセル率が上がる?

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それでは、早速はじめましょう!

診療予約システムを検討する際に、「ネット予約を利用すると、キャンセル率が上がるのでは?」という声があがることがあります。そこで今回は、ネット予約とキャンセル率の関係についてまとめてみたいと思います。

キャンセル率が上がるのでは?と感じた理由は、「電話で予約をキャンセルするより、ネットのほうが簡単だからキャンセルしやすい。」ということだと思うのですが、これは少し短絡的すぎる考えだと思います。

なぜなら、この考えは下記のような要素を考慮していないからです。

1.キャンセル方法の違いで、キャンセルを止めたりしない
患者さんがキャンセルする大半の理由は「本当に行けなくなったから」です。この場合、キャンセル方法が電話であろうとネットであろうとキャンセルされてしまいます。

2.ネットの方がキャンセルを制限できる
ネットだからこそ「3日前までキャンセル可能」のようにキャンセル可能条件をシステム的に設定することができます。一方、電話ではいつでもキャンセルできてしまいます。予約時刻の直前でもできてしまいますので、むしろ電話のほうがキャンセルしやすいとも言えます。

3.うっかり忘れによるキャンセルが減る
診療予約システムには「もうすぐ予約日お知らせメール」機能があります。この自動配信メールが、「うっかり忘れ→ドタキャン」を確実に減らしてくれます。

おそらく「ネットのほうがキャンセルしやすい」というイメージは、インターネット黎明期にネット反対派が行っていた主張、「ネットは危険。相手が見えない。」が植えつけたものだと思います。しかし、インターネットが社会に定着した今、本当にそのように思われますでしょうか。

あるいは、「実際にネット予約を導入してからキャンセルが増えた」という方もいるかもしれません。本当に増えたかどうかを確認するには、下記の2つのデータが必要になります。

・電話だけで運用していた時の「全体のキャンセル率」
・電話+ネットを使い始めてからの「全体のキャンセル率」

つまり、全体としてキャンセルが増えたか減ったかのデータです。ちなみに、ネットが何割、電話が何割というのは、クリニックの経営にとってほとんど意味がありません。あくまで、全体が増えたか、減ったかが問題です。残念ながら私はこの類のデータを見たことがないですし、もしあったとしたら、おそらくネットを使ったほうが「全体のキャンセル率は下がる」可能性が高いとすら思います。

それは、上に書いたように、患者のうっかり忘れが減ると同時に、「予約は〇日前までしかキャンセルできない。」という意識を患者が持ってくれるからです。確かにネットキャンセルは、病院側の画面で見ていると「突然、キャンセルされた」ように見えます。一方、電話であれば、患者さんとの直接コミュニケーションが取れるので「仕方がなくキャンセルしたんだな。」というように納得しやすいです。しかし、手段や見え方が違うだけで、同じ患者がキャンセルする理由は変わりません。仮に患者さんが「どうしても行けなくなった」という理由で、ネットキャンセルしたケースと、電話でキャンセルしたケースがあったとします。多くの人が、ネットでキャンセルした患者は「安易にキャンセル」したと感じるでしょう。そして、電話でキャンセルした患者は「わざわざ電話を掛けてきてくれた。」と真逆の捉え方をするのではないでしょうか?この例においてはそれは間違った解釈であり、私たちが陥りがちな一種の認知バイアスだと思います。この状況も「ネットはキャンセルが多い」と感じてしまう理由のひとつだと思います。

そしてここで本当に重要なことは、ネットと電話という区別ではなく、「クリニック全体としてキャンセル率をどう減らすか。」という視点です。

私が考える、全体のキャンセル率を減らすために必要なことの1つは、患者さんに「キャンセルはできるだけしないでほしい」ということをしっかり訴えかけることだと思います。

例えば「予防接種は予約に基づいて事前にワクチンを仕入れるため、キャンセルはご遠慮願います。」と告知するだけで、患者さんも「ああ、そうなのか。」と意識が変わります。もともとキャンセルは良くないことだとわかっていますが、「自分のために仕入れてくれている。」という想像力は多くの患者が持っていません。幸い、診療予約システムを使うことによって、モバイルサイトでの告知など患者さんとのコミュニケーションルートが増えます。これを活用し、通ってくれる患者さんに告知していった場合、「全体のキャンセル率」は下がるのではないでしょうか。

また、電話ではいつでもキャンセルできてしまいます。つまり、ドタンキャンもできます。電話でキャンセルすると気まずいという理由で、あえて電話せずに無断キャンセルする可能性すらあります。一方で、ネットは〇日前までしかキャンセルできません。この事実によって、直前のキャンセルは良くないことだと患者さんはより強く認識してくれます。このように考えた時、ネットでキャンセルできることに自体に問題があると言えるでしょうか。またドタキャンやノーショー(連絡なしキャンセル)といった問題は増えるでしょうか、減るでしょうか。

この問題はよく話題にあがるので、当エントリーをお読みいただいた方には是非、過去のイメージや認知バイアスに惑わされることなく、ご自身のクリニックのために冷静に考えていただきたいと思います。

それではまた、次回のエントリーで。
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